main graphics
Top > セミナー&シンポジウムの記録 > 参加記 14'春季・共同セミナー(東京)

セミナー&シンポジウムの記録

2014年春季・共同セミナーシンポジウム 参加記
菊地 大悟 (総合文化研究科 地域文化研究専攻・IGK所属)

学生セッション:市民社会とマイノリティ
LGBTグループの論点と課題

 近年「LGBT」と呼ばれるようになった、いわゆる「性的マイノリティ」についてのグループを設けた。LGBTは現在、世界的に経済、政治を動かすファクターとなっている。政治家や有名人が反LGBT的発言をすると厳しく非難されることはインターネットが発達した現在では頻繁におこっており、「LGBTフレンドリー」な企業は評価が上がる。ソチオリンピックのロシアの反LGBT的政策が国際的に批判されたことや、ドイツのバーデン=ヴュルテンブルク州で同性愛に関して授業で教えるか否かが議論になったことも記憶に新しい。日本では明白な擁護政策も排除政策もなされてはいないが、今年4月に東京で行われたLGBTパレードに首相夫人も参加したことは、国内外のメディアにとりあげられた。このように、社会からLGBTの存在が認識されつつあるものの、日本に住む多くの人にとっては別世界の出来事のように映っているだろう。
 私たちのグループワークをまとめると、次の点にまとめることができる。
・ マイノリティとしてのLGBTは、様々な点で他のグループのテーマと異なる。まず、坂井氏がセッション冒頭で行ったまとめに依拠すると、LGBTは民族問題のような伝統的なマイノリティ概念ではなく、「拡散型」マイノリティに属するだろう。太古から存在したものと推測されるが、ある種のタブー化が行われた後、権利などを求める中で、「性的マイノリティ」として認識されるようになった。
・ 学生セッションでの他のグループのテーマは、生まれからそこに属し、自らをそのマイノリティに踏み入れる必要はない。LGBTの場合、生まれたときから自明ではなく、成長過程で自認する必要がある(あるいは自認してしまう)ことが多い。場合によっては打ち明けるのが一番難しい相手は家族であるということもある。それゆえに、選択可能なライフスタイルとして議論を片づけられてしまうこともある。
・ LGBTは人間が生活する場所にはどこにでもいるとされる。それゆえ、LGBTの諸権利を求める活動は、国内の条件に規定されながらも、国際的規模の動きである。調査に時間をかければ、今後同じ対象に関する国際比較も可能となるだろう。
・ しかし、対象自体、はたしてひとつのまとまりとして認識することが適切なのかということが他のグループよりも難しい。すなわち、「異性愛ではない」という条件だけで一括りにした議論は本当に可能なのだろうか、LGBTは四つに分類しているが、それすら適切かという疑問もある。性自認、ジェンダー、恋愛対象などのファクターが複雑に絡み合い個人を形成する以上、異性愛以外というくくりでは乱暴かもしれない。経済格差や婚姻関係に関しては、男女の平等や個人主義といった視点から議論することも必要である。このような限界を意識させるものであった。
フロアからの質問では、メディアでのLGBTの扱いや、日常におけるそのような人たちとの関わりについて関心が集まった。LGBTの中で特にゲイは、ありのままというよりは外見の男性性を追及するあまり「女性性の否定現象」とも言えるようなことも起こっていることなどにも触れられた。
 セミナーの他のセッションとの関連性があった他のグループとは異なり、LGBTは学生セッションでのみ扱われたテーマであった。そのために知識の不足によって議論は不完全なものとなってしまった印象がある。今後もこのテーマに継続して関わり、知識を蓄えるとともに、新たな議論をできるようにしたいと思う。日本の大学ではLGBTグループの活動の方が盛んである。趣味グループやエイズの啓蒙組織もある。今後はこのような団体に接触することも考えている。短い期間ながらも準備をし、議論に参加してくれたことに感謝したい